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緑の花

制作日:2009/03/16 掲載日:2010/03/22 最終修正日:---

 とある中世っぽい時代のとある水の豊かな平和な国の、恋をしている可愛らしいお姫様と、恋をしているたくましい騎士がいました。

 そして、そんなふたりを認めたくない国王がいました。
「ば、馬鹿な! おまえたちには国の未来がかかっているというのに! 娘よ、フィアンセのチョッパーでは不満だというのか!?」

 ふたりは国王に向かって言います。
「私たちの恋の何がいけないというの? 私は国を捨てることになっても、彼と一緒になります!」
「たとえ身分の違いがあれど、私は恋してしまった。守るべき国よりも、彼女のことが大切なのです」

 国王は悩みました。
 ふたりの恋は、どうしても成就させてはならないのです。そんなことをしてはこの国は崩壊してしまう。
 しかし、自分の娘と長年仕えた近衛騎士は、もう自分のいうことなど気にしないことでしょう。ただこのふたりは、報告に来ただけなのです。

「わかった。おまえたちの結婚を認めよう。それから娘よ、冗談でも出ていくなどと言わないでおくれ。お父さんはそのたびに、寿命が1週間は縮んでしまうよ」

 国王の寛大な計らいで、ふたりはめでたく、みんなに祝福されて結婚したのでした。


 3ヶ月後、あぶらとり紙でオデコをポンポンしながら、結婚した可愛らしいお姫様が言いました。
「ほらこどもたち、気をつけて泳ぐんですよ。ハイハイが出来るようになったら、パパと一緒にピクニックに行きましょう。草原でおうたを歌うのは、とっても気持ちいいですよ。」
「は〜いっ!」
 結婚したたくましい騎士はもう眠っています。


 さらに3ヶ月後、とある中世っぽい時代のとある水の豊かな平和な国の、外れにある小さな草原に、結婚した可愛らしいお姫様と、結婚したたくましい騎士と、たくさんの子供達がいました。
 季節はもう秋なので、コオロギやカエルたちが大音量で合唱していました。こどもたちは楽しそうに、合唱に参加しています。

 結婚した可愛らしいお姫様は、伴侶に寄り添ってこどもたちを眺めます。その表情は聖母マリアも嫉みを覚えるほどの、可愛らしい慈愛に満ちていました。「最初は心配だったけれど、元気に育ってくれて良かった。 あのこたち、あなたにもわたしにもちゃんと似ている」
「そうだね。おや、あれはなんだい?」

 そこには、少し盛り上がった地面に、棒が指してありました。まるでお墓です。
「そう、お墓。あなたと一緒になるってお父様に言うときにね、一緒になって頼んだ騎士の。彼も、身分違いの恋をしていたの」
「へぇ、それでその恋はどうなったんだい?」
「お父様は認めてくれて、結婚はしたのだけど、我慢できなかったのでしょうね。食べられてしまった。あのお墓の下にはなにもないの。奥さん、鳴きながら棒を挿していた」
「そうか……」


 草原には、コオロギとカエルと、子供達の合唱が響いていました。
 緑色の、カエルにもオオサンショウウオにも似たこどもたちは、輪になって歌っています。
 離れて眺めている、結婚した可愛らしいお姫様には、リズムに乗って右に左に揺れるこどもたちが、綺麗な花の様に見えました。




制作後記
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お読みいただき、ありがとうございました。
ライトノベルを書こう!に初めて投稿した作品です。
このページから、コメントが書けますので、ついでに酷評してくれると作者が舞い上がります。

この作品は、お題ジェネレーターから、以下のお題をいただいて書きました。
■ジャンル
自由(制限なし)
■キーワード
138. 両生類  206. あぶらとり紙  67. フィアンセ  
■タイトル
23. 緑の花
■シチュエーション
6. お姫さまと騎士の恋
■ セリフ
48. ば、馬鹿な!




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